とある駐在員の1日〜海鮮祭り
目の前に並ぶ見事なまでの海鮮を前に思わずつぶやいた。
ここは魚屋か。
海外の地方都市。それも沿岸部でよく遭遇する事態だ。
そう。それは海鮮シバリ。
これが日本ならば喜んで食べるのだけど、海外しかも途上国。さらに近隣に化学プラントまである場所でこれはつらい。
加えて海鮮に合うからと、アルコール度数の高い蒸留酒、中国ではおなじみの白酒、なんか出てきたもんなら、もうどうにもならない。アルコール度数の高い危険な酒はできるだけ胃を食べ物で満たしてから飲みたい。だがしかーし!ここには海鮮しかなーい!という窮地。そこに見出した一筋の光明。それは枝豆。
作戦はこうだ。
テーブルにならぶ食べ物で唯一、海鮮ではない枝豆をガンガン胃に詰め込む。
海鮮は貝を避ける。そして火が通っていることが色で判別できるエビを選択、海鮮最高っすよ!を演出。
作戦名は…
…いや特にない。
しかし現実はそんなに甘くはない。
そんな小手先の努力も、お客によるどんどん食べて!攻撃により自軍の皿の上には巻貝やら蟹やらがあっけなく積まれていったのであった。
そしてさらに追い討ちをかけるように、海鮮はあたる場合があるから、殺菌のために生ニンニクを食べなさい!って生ニンニクで腹やられるだろ。
この
「あたるリスクはあるが、取りあえず美味いから喰って、そのあと辻褄合わせに殺菌する」
という手法がいかにも中国らしい。
もちろん現地ではこれは最高級の食材。みんなガンガン食べる。食べないのは非常に申し訳ない。そしてガンガン飲む。お客がガンガン飲むということは、自分もガンガン飲むことを意味する。空きっ腹に高濃度酒はつらい。しかし、過去の食あたりの経験を繰り返したくはない。
波音が耳に優しく、美しい花火が海岸では上がっている。海の遥か上空では孔明灯が神秘的にただよっている。
ああ、世界は美しい。
そんな現実逃避をしながら、目の前の蟹の解体作業に入った。